……ごめんなさい。驚かせすぎちゃった?」
凪は少しだけ眉を下げて、困ったように笑った。 ブログのバナーで見かける彼女のイメージ通り、どこか儚げで、守ってあげたくなるようなおとなしい雰囲気。
「いえ……ただ、まさか凪さん本人が来るとは思わなくて。管理人さんは、もっと……」 「もっと、おじさんだと思ってた?」
クスクスと喉を鳴らして笑う彼女の仕草は、清楚そのものだ。 彼女はテーブルの下で、丁寧に揃えた膝の上に手を置き、少し俯きながら言葉を続ける。
「普段はね、大人しくしてるのが楽なの。でも……夜になると、時々、自分でも抑えられないくらいの『物語』が溢れてきちゃうことがあって」
そう言って彼女が顔を上げた瞬間、空気が変わった。
潤んだ瞳の奥に、吸い込まれるような暗い熱が宿っている。 彼女は、ゆっくりとテーブルを這わせた指先で、私の手の甲をなぞった。
「あなたのDM……とっても素敵だったわ。だから、私の『官能ノート』に、あなたの声も刻ませてほしいの」
彼女の指先が、私の指の間に絡みついてくる。 おとなしい少女の仮面が、一歩ずつ剥がれ落ちていく。
「外はまだ雨、止みそうにないわね。……ここじゃ、続きは綴れないと思わない?」
わずかに口角を上げた彼女の表情は、獲物を狙う小悪魔そのものだった。
カフェを出て、雨に濡れたアスファルトを二人で歩く。 凪の小さな傘に肩を寄せ合うと、彼女の体温がダイレクトに伝わってきた。
「……着いたわ。ここなら、誰にも邪魔されない」
案内されたのは、彼女が密かに「執筆」に使っているという隠れ家のような空間。 ドアを閉めた瞬間、彼女は濡れた髪を無造作にほどき、私を真っ直ぐに見据えた。
その瞳は、カフェで見せたおとなしい少女のものではなかった。
「ねえ、さっきのDMの続き……言葉だけじゃなくて、もっと身体で教えてくれる?」
彼女の指が、私のシャツのボタンにゆっくりと、でも迷いなく掛けられる。 外の雨音を遮断した静寂の中で、彼女の熱い吐息だけが、私の理性を一枚ずつ剥がしていく――。